うわぁぁぁぁ |
2008年 04月 14日 |
彼の結婚式は盛大に行われた。
本人は小ぢんまりとした結婚式にしたかったみたいだけど、周りのお祭り騒ぎの好きな連中がそうさせなかったみたい。迷惑な話よね。結婚式ぐらい好きにやらせればいいのに。
あたしは酒で火照った頬を冷やそうと、愛用の扇子で顔を扇ぐ。今日は春先にしては少々肌寒い。冷えた風が心地よかった。
なんだかひどく疲れていた。
目を閉じれば、結婚式のハイライトが脳裏によぎる。彼と新婦のキスシーン。
吐き気のような、何かどんよりとした感情。
目頭が熱くなる。いつかはこうなるんじゃないかと思っていたのに、これは少し早すぎた。
ただの身勝手な、負け犬の遠吠えだってことはわかってる。あたしは何もしなかったんだから。
そう。
あたしは彼のことが好きだった。
彼とは昔からの腐れ縁。もう10年近い付き合いになる。
意識するには近すぎたんだと思う。でも、今となってはそれも言い訳にすぎない。
吐き気がした。
気分が悪い。
自宅まではそんなに遠くないはずなのに。
早く帰って眠りたいのに。
明日になれば笑えるはず。
明日になれば。この夜を越えれば。
――この夜?
あたしは路地裏に駆け込み、胃の中身を盛大にぶちまけた。
瞳にたまった涙で視界が少し歪む。
後悔だけが、あたしの気分を悪くする。
どうして、あたしは何もしなかったんだろう。
好きだったのに。彼とならずっと一緒にいれると思ったのに。
それなのに、どうして今のままの関係を望んだんだろう。
確かに互いに意識しあうと、仕事が非効率的になると思う。
互いに茶化しあいつつ、たまには意見をぶつからせて、互いの業務をうまくすり合わせる。
そうだ。
あたしにとっては、仕事が全て――
――違う。
あたしはただの臆病者だ。
今の関係が壊れるのが怖かっただけだ。
周囲から茶化されるのが嫌だっただけだ。
だから、あたしは自分から何もしなかった。
身勝手な話だったと思う。
何せ、いつか向こうが自分の好意に気付いてくれる、ずっとそう思っていたんだから。
馬鹿みたい。
少しずつ、壁で背中をこすりながら、地べたに座る。
これはお気に入りのドレスだけど、そんなことはどうでもよかった。
あたしは少しだけ笑った。
気がついたら、夜はすっかりふけていた。少し寝ていたみたい。
頭が痛いし、気分も悪い。空腹のような感覚だが、食欲は無い。
ああ、そうだ。吐いたんだった。
寒い。
あたしは少しだけ体を震わせて、立ち上がった。体の節々が痛む。
ドレスについた泥を少し払う。
人の気配がした。
彼だった。
あぁ、そうか。ここは連中が行きつけてる飲み屋だった。
思わず言葉が詰まる。
彼もあたしに気付いたみたいだった。
「おー、なんでこんなとこにいるんだ?」
言葉が出ない。
「飲みすぎてんじゃねーのか? ザマぁねぇ」
彼が普段どおりの笑顔を浮かべる。
「今からでも別にいーぜ。ちょうど例のコンビが漫才中だ。しょーもないネタだけどな」
体が震える。
「おい、震えてるぞ? 大丈夫かよ」
コレが最後。
一人の彼と会うのは、コレが最後。
「……おい?」
あたしは彼に抱きついた。
「……お幸せに」
そう、耳元で囁いて。
本人は小ぢんまりとした結婚式にしたかったみたいだけど、周りのお祭り騒ぎの好きな連中がそうさせなかったみたい。迷惑な話よね。結婚式ぐらい好きにやらせればいいのに。
あたしは酒で火照った頬を冷やそうと、愛用の扇子で顔を扇ぐ。今日は春先にしては少々肌寒い。冷えた風が心地よかった。
なんだかひどく疲れていた。
目を閉じれば、結婚式のハイライトが脳裏によぎる。彼と新婦のキスシーン。
吐き気のような、何かどんよりとした感情。
目頭が熱くなる。いつかはこうなるんじゃないかと思っていたのに、これは少し早すぎた。
ただの身勝手な、負け犬の遠吠えだってことはわかってる。あたしは何もしなかったんだから。
そう。
あたしは彼のことが好きだった。
彼とは昔からの腐れ縁。もう10年近い付き合いになる。
意識するには近すぎたんだと思う。でも、今となってはそれも言い訳にすぎない。
吐き気がした。
気分が悪い。
自宅まではそんなに遠くないはずなのに。
早く帰って眠りたいのに。
明日になれば笑えるはず。
明日になれば。この夜を越えれば。
――この夜?
あたしは路地裏に駆け込み、胃の中身を盛大にぶちまけた。
瞳にたまった涙で視界が少し歪む。
後悔だけが、あたしの気分を悪くする。
どうして、あたしは何もしなかったんだろう。
好きだったのに。彼とならずっと一緒にいれると思ったのに。
それなのに、どうして今のままの関係を望んだんだろう。
確かに互いに意識しあうと、仕事が非効率的になると思う。
互いに茶化しあいつつ、たまには意見をぶつからせて、互いの業務をうまくすり合わせる。
そうだ。
あたしにとっては、仕事が全て――
――違う。
あたしはただの臆病者だ。
今の関係が壊れるのが怖かっただけだ。
周囲から茶化されるのが嫌だっただけだ。
だから、あたしは自分から何もしなかった。
身勝手な話だったと思う。
何せ、いつか向こうが自分の好意に気付いてくれる、ずっとそう思っていたんだから。
馬鹿みたい。
少しずつ、壁で背中をこすりながら、地べたに座る。
これはお気に入りのドレスだけど、そんなことはどうでもよかった。
あたしは少しだけ笑った。
気がついたら、夜はすっかりふけていた。少し寝ていたみたい。
頭が痛いし、気分も悪い。空腹のような感覚だが、食欲は無い。
ああ、そうだ。吐いたんだった。
寒い。
あたしは少しだけ体を震わせて、立ち上がった。体の節々が痛む。
ドレスについた泥を少し払う。
人の気配がした。
彼だった。
あぁ、そうか。ここは連中が行きつけてる飲み屋だった。
思わず言葉が詰まる。
彼もあたしに気付いたみたいだった。
「おー、なんでこんなとこにいるんだ?」
言葉が出ない。
「飲みすぎてんじゃねーのか? ザマぁねぇ」
彼が普段どおりの笑顔を浮かべる。
「今からでも別にいーぜ。ちょうど例のコンビが漫才中だ。しょーもないネタだけどな」
体が震える。
「おい、震えてるぞ? 大丈夫かよ」
コレが最後。
一人の彼と会うのは、コレが最後。
「……おい?」
あたしは彼に抱きついた。
「……お幸せに」
そう、耳元で囁いて。
# by ninememory | 2008-04-14 22:53 | 小説


